山形県鶴岡市・銀座通り商店街|エリアリノベーションの現場から
シャッター商店街は、
もう一度にぎわえるか。
DIYで空き家を直して1年半。お店が9店生まれた商店街の、次の一手
合同会社リンネ 笹岡 洋佑鹿沼トークイベント(2026年10月)
自己紹介
笹岡 洋佑
合同会社リンネ 代表
01一橋大学 卒業
02東京のIT企業で、Webマーケター・システムエンジニアとして勤務
03鶴岡へ移住後、DIYで空き家再生事業を始める
04賃貸業・宿泊施設・レンタルオフィスを運営
05YouTube「ポレポレDIYチャンネル」
チャンネル登録 47万人
YouTube「ポレポレDIY」
チャンネル登録 47万人
空き家を買って、直すところをぜんぶ動画で公開しています。
まずは、鶴岡ってどんなまち?
山形県の日本海側、庄内地方のまちです。
面積
1,311 km²
東北地方でいちばん広い市(東京23区の約2倍)
鶴岡市の人口
113,254 人
2005年に6市町村が合併。年々、減り続けています。
庄内地方(鶴岡・酒田など2市3町)の人口
約24.7 万人
江戸時代は、庄内藩・酒井家の城下町
2014年、日本で初めてユネスコ食文化創造都市に認定。
出典:国土地理院 全国都道府県市区町村別面積調/鶴岡市 住民基本台帳人口(2026年8月末)/山形県 推計人口(庄内地域 246,953人、2024年10月1日現在)
鶴岡の市街地は、どう変わったか
お城のまわりの街が、田んぼの中へ広がっていきました。
1970年代後半銀座通り
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現在銀座通り
郊外に住宅地と大型店ができて、まちの中心が空洞化。いわゆる「スプロール現象」です。
出典:国土地理院 空中写真(1974〜1978年撮影)・全国最新写真(シームレス)。同じ範囲を切り出して比較
銀座通り商店街とは
かつて、鶴岡でいちばんの繁華街でした。
いまのアーケード
鶴岡の中心部、約500mの商店街
最盛期は、1日の通行量が1万人を超えたとも
1988〜91年に、アーケードを含む街並みを整備
銀座通りの盛衰
買い物の中心は、駅前へ、そして郊外へ。
1978駅前に「庄交モール」。核テナントはダイエー
1987駅前再開発ビル「マリカ」。ジャスコが入る
1991対抗して、銀座通りにアーケード
2001隣の三川町にイオン三川(現 イオンモール三川)
2002駅前のダイエーが撤退
2005ジャスコも閉店
地図:© OpenStreetMap contributors
いまの銀座通りを歩くと
全国シャッター商店街ランキング 9位(2023年 テレビ番組)
シャッター率 59.8%。「シャッター街」と紹介されました。
アーケードは老朽化
写真:2026年10月 撮影。中心市街地11商店街の空き店舗は44店(2022年 市調査)
鶴岡の空き家
鶴岡には、空き家がたくさんあります。
鶴岡市の空き家(令和7年度・最新の調査)
4,035棟
14年前の2,273棟から、約1.8倍。
建物の13棟に1棟が空き家です。
▼ なぜか?
建築費が高騰していて、外注して直すと、事業として採算が合わない。
▼
出典:鶴岡市「令和7年度 空き家実態調査の結果」(令和8年3月31日現在。平成23年度 2,273棟 → 令和2年度 3,582棟 → 令和7年度 4,035棟、空き家率7.6%)
DIY = 自分たちで直すこと
一方で、DIYなら、まだまだ採算が合います。
01DIYでもよい部分は、
自分で直す
外注とDIYのハイブリッドで、採算に合うラインの初期投資に抑える
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↺ このサイクルを回して、これまで10棟以上の空き家を直してきました。
たとえば、こんな空き家を
同じ場所が、DIYでここまで変わります。
キッチン
BEFORE▼
AFTER
和室 → リビング
BEFORE▼
AFTER
ビル3階の共用スペース
BEFORE▼
AFTER
その延長でやっていること
エリアリノベーション = まとめて直して、土地の価値を上げる
ふつうのリノベーション
広いエリアの中で、ポツン、ポツンと離れた物件を
1軒ずつ直す(これまで私がやってきたこと)
▶
エリアリノベーション
半径100mくらいにキュッとまとめて、
何軒かを一気に直す
離れていると「点」のままですが、まとまるとエリアそのものの価値が上がっていきます。
いま、銀座通りで起きていること
この1年半で、
以前は、年に1〜2店あればいいほうでした。
いま銀座通り周辺は「出店ラッシュ」です。
シャッターが、開いた。
9店
この1年半で、銀座通りとその周辺に
写真:ショーナイツウ!!(shonai2.fun)/note「つるおかの新しいたまり場」/自社撮影
銀座通りとその周辺に、新しくできたお店
05Paw tsuruokaトリミング・ペットホテル|2026年2月
06DIVANAフィットネス女性専用ジム|2026年5月
07カレーとお酒 もぎてん欧風カレー|2026年5月
このほかにレンタルオフィス、民泊も開業。 写真:ショーナイツウ!!(shonai2.fun)/ebisuyaは note「つるおかの新しいたまり場」/NAS・もみじは自社撮影
新しくできたお店の場所
銀座通りとその周辺に、9店。
1スパイスとヒトスパイス料理
2ebisuyaカフェ&バー
3DARUMAバー
4WONDER.バー
5Paw tsuruokaトリミング・ペットホテル
6DIVANAフィットネス女性専用ジム
7カレーとお酒 もぎてん欧風カレー
8NAS古着屋
9もみじ居酒屋
地図:国土地理院(地理院タイル・淡色地図)に店舗位置を加筆
その中で、私がやっている物件
私自身は、4つの建物を直しています。
[01] 旧メガネのスズキ
1F バー / 3F レンタルオフィス
稼働中
[02] 旧みうら花屋(平屋)
9月5日、古着屋がオープン
稼働中
[03] 旧みうら花屋(3階建て)
1Fにお店、上の階をオフィスか宿に
準備中
[01] 旧メガネのスズキ|外観
200万円で買ったメガネ屋さん。シャッターを開けました。
BEFORE|買った直後
AFTER|いま
[01] 旧メガネのスズキ|1F
メガネの売り場が、若い人の集まるバーに。
BEFORE|メガネ売り場
AFTER|バー「WONDER.」(2026年1月)
8割がたDIYで改装。AFTER写真:ショーナイツウ!!(shonai2.fun)
[01] 旧メガネのスズキ|3F
住居だった3階が、レンタルオフィスに。
BEFORE|3階のキッチン
AFTER|オフィスの共用スペース(2026年9月〜)
4室のうち2室に入居。社員さんがお昼に、まわりのお店へランチに出るようになりました。
[01] 旧メガネのスズキ 3F|ビフォー → アフター
3階は、仏間と和室がオフィスになりました。
元仏間 → オフィス
BEFOREAFTER
元和室 → オフィス
BEFOREAFTER
畳をはがして足場板の床に、壁は漆喰に。天井も自分たちで塗りました。
[02] 旧みうら花屋(平屋)
閉まっていた花屋さんが、古着屋に。
BEFORE
AFTER|古着屋「NAS」(2026年9月)
「銀座通り、なんか最近来てるよね」
なぜ、こうなったのか。
私ひとりがやったわけではありません。
商店街に関わるみなさんのおかげです。今日は代表して、その理由をお話しします。
街が盛り上がっていく流れ
出店が増えると、次のオーナーが物件を出してくれる。
「うちの物件も、
どうにかしてほしい」
02覚悟があり、エリアの
ことまで考えられる人が
引き継ぐ
自分のお金と労働力で直す
03物件を直して、
貸す
DIYで直して、始めやすい家賃で
STEP 1|いちばん大きい
物件を、次の人に引き継いでくれたオーナーさんがいた。
なぜ、シャッターが増えたのか
お店がダメだったからではなく、物件が市場に出てこなかったから。
▼
適正な価格で出てくれば、動く
売ってくれる、貸してくれる、任せてくれる。前のオーナーさんが動いてくれて、はじめて次の人が挑戦できました。
旧メガネのスズキ
旧みうら花屋(平屋)
旧みうら花屋(3階建て)
旧恵比寿屋本店 → ebisuya
まず「出してくれる人」がいた。ここがすべての始まりです。 ebisuyaの写真:note「つるおかの新しいたまり場」
STEP 2
リスクを取って飛び込んだ人がいた。
スパイス料理「スパイスとヒト」
路地裏の元スナックを150万円で取得。改装費を30万円ほどに抑えて開業しました。
カフェ「ebisuya」
まだ誰も注目していない時期に出店。改装も自費、ほとんど休まずお店を開け続けています。
バー「WONDER.」
若い人が集まるお店。私もかなり安い家賃でお貸ししています。
補助金があるから、ではなく「やりたいから、やる」。自分のお金と時間と労働力をかける人に渡ると、物件は動きます。
この流れを支えた「場」
オーナー同士が集まる場を、行政がつくってくれた。
エリアビジネスミーティングの様子
事業の経過は YouTube「DIYでシャッター商店街を再生するチャンネル」で公開しています。
エリアビジネスミーティング
鶴岡市と鶴岡TMO(事務局:鶴岡商工会議所)の「公民共創のまちづくり推進事業」。集まるのは物件を持っていて、自分の判断で動かせる人だけ。
伴走は、木下 斉さんたち専門家
『稼ぐまちが地方を変える』の著者。活用モデルから回収の計算まで、直接教わりながら進めています。
集まって、変わったこと
「自分の利回り」から、「エリアの価値」へ。
オーナーが、単独で動いた場合
物件単体の利益だけを考える
合理的なのは「安く直して、誰でもいいから高く借りてくれる人に貸す」
エリア全体の価値が上がるわけではない
目先の利益を考えるのが、限界
▶
エリア内のオーナーで、連携した場合
エリアの価値向上まで考えたリーシング(誰に貸すか)ができる
物件単体では最高の利回りにならず、一見すると不合理
でも長い目で見ると、エリアの価値が上がり、物件の価値も上がる
組むことで視野が広がり、できることも広がる
STEP 3
エリアが再生するリーシング。そのための3つの工夫。
01入ってきやすい
コミュニティをつくる
新しく出店したい人が、入りやすい
相談できる仲間がいる
「この人たちがいるなら、ここで開業してみようかな」という理由にもなる
02物件を切らさない
出店したい人が現れたら、すぐに物件を紹介できる体制をつくっておく
そのために、貸してくれるオーナーとつながっておく
03事業が回る家賃で貸す
多少利益率が下がっても、こちらも採算が合うラインで全力で協力する
その分、DIYで抑えられるところは抑え、必要以上の修繕はしない
金がないなら、知恵を出す。
STEP 4
発信で、「盛り上がってるぞ」という機運をつくる。
YouTube「ポレポレDIY」登録47万人
商店街の再生を、動画でずっと発信。お店の紹介動画もつくっています。
Instagram「ebisuya」フォロワー2,765人
投稿を見て、山形市や東京からわざわざ来る人がいます。
Instagram「WONDER.」フォロワー882人
イベントや営業の案内を、こまめに発信しています。
発信する人がいると、「銀座通り、いいかもしれない」と、出店の候補地に入るようになります。
STEP 4|発信を続けた結果
テレビの取材も、来るようになりました。
2023年9月|全国放送のバラエティ番組
全国シャッター商店街ランキング 9位
シャッター率 59.8%。「シャッター街」として紹介されました。
▶
いま|TUY(テレビユー山形)
「どすコイやまがた」でも
放送されました
今度は、再生に取り組む商店街として取材していただきました。
左:番組で紹介されたランキングをもとに作成した図/右:番組ホームページ(tuy.co.jp/dosukoi)
STEP 5|そして、また STEP 1 へ
出店が増えると、「うちの物件も」と声がかかる。
「うちの物件も、
どうにかしてほしい」
02覚悟があり、エリアの
ことまで考えられる人が
引き継ぐ
自分のお金と労働力で直す
03物件を直して、
貸す
DIYで直して、始めやすい家賃で
ここから、やりたいこと
銀座通りに
「滞在する人」を増やす。
そのために、銀座通りを「オフィス街」にします。
めざす姿
働く・泊まる・住む。そして、消費が生まれる。
01働く
働く人を増やす:オフィス(WORK ALLEY)、AI講座
滞在する人が増える
これこそが「まちづくり」だと思っています。
次に、やらなければいけないこと
民間の空き家の次は、
公共の財産を活かす。
シャッター商店街には、使える「公共のもの」がたくさん眠っています。
銀座通りにある、公共のもの
建物も、広場も、公園も、植栽も。手を加える余地だらけです。
01建物
まちづくりスタジオ
鶴岡Dada
市の建物。3階建て・延べ952㎡。
02広場
Dada広場
Dadaの横にある、テーブルと椅子がある屋根付きの空間。
04植栽
通りの植栽
歩道の植え込み。ほとんど手入れされていない。
写真:01・03・04=Google ストリートビュー(2023年10月撮影)/02=2026年10月撮影
01|まちづくりスタジオ鶴岡 Dada
市の建物を、商店街が無償で借りて運営しています。
外観(銀座通り側)
中は吹き抜けのホール
どんな建物?
1990年築、鉄筋3階・延べ952㎡。もとは市のコミュニティプラザ
2017年に「Dada」としてリニューアル
1Fカフェ、2Fは高校生の自習スペース(毎日10〜15人)・コワーキング・スタジオ
いまの課題
維持費の多くを、市の補助と組合の持ち出しでまかなっている
国の交付金で改修したため、用途を変えるには制限がある
いまの貸付は2027年3月まで。その先の運営をどうするかが、まさに今の論点です。
出典:鶴岡市提供資料「まちづくりスタジオ鶴岡Dadaの概要」(R8.9)/写真:Google ストリートビュー
02|Dada広場
テーブルと椅子がある、屋根付きの空間。でも、ふだんは人がいない。
テーブルと椅子がある屋根付きの空間。通りに面していて、2025年度に屋根を改修
イベントの日以外、広場からの収入はゼロ。ここに毎日、人と商いを置きたい。
写真:2026年10月撮影(人工芝はイベント用に敷いたもの)
03・04|ピコット銀座と、通りの植栽
管理が行き届いていない。だからこそ、手を入れられる。
ピコット銀座
通りの植栽
写真:Google ストリートビュー(2023年10月撮影)。植栽は年数回の管理・職員対応が中心(市資料)
これから|次のステージへ
まちづくり会社を立ち上げて、公共空間を動かす。
これまで
民間の空き家を、
民間事業者がそれぞれ直す
オーナーや事業者が、それぞれ自分の物件を直してきた
手を入れられるのは、あくまで民間の建物だけ
民間だけでの、面の再生
▶
これから
まちづくり会社で、
公共のものにも手を入れる
Dada・Dada広場・ピコット銀座・植栽など、公共のものも動かせるようにする
民間の建物と公共空間をあわせて、エリア全体で地域を再生できるようにする
公共も含めての、面の再生
※構想段階です。Dadaは当面いまの体制のまま、2027年度以降の運営を市・商店街と相談しています。
まとめ
シャッター商店街は、もう一度復活する。
01かつての繁華街が、シャッター街に車社会と郊外の大型店で人が離れ、シャッター率は59.8%に。
02DIYで直して、始めやすい家賃で貸す自分では4つの建物を再生。バー・古着屋・オフィスが入りました。
03この1年半で、9店がオープン物件を出すオーナー、飛び込む人、集まる場、発信。この流れが回り始めました。
04次は、公共の財産を活かすDada・広場・公園・植栽。まちづくり会社をつくって、エリア全体の価値を上げます。
鶴岡・銀座通りに、ぜひ一度遊びに来てください。ありがとうございました。